アウトサイダー
それから、母と一緒に来ていた役所の人に「早く」と促され、その車の中で知った。
母がずっと父と離婚の話をしていたことを。
父に暴力を振るわれるようになって、いつか私にもと恐怖を感じて、そうしようとしていたことを。
それでもその話をするたびに、父は激高してまた殴っての繰り返し。
それなのに母は私に謝り続けた。
たった一度だったけれど、私を置いて逃げたことを。
そして、私にまで手が及んだことを。
だけど……父も母も私がいるから苦しんだんだ。
「誰のせいで……」
あの時そう言った父の声が、耳から離れなくなってしまった。