アウトサイダー
確かに辛かった。
あの頃――父が母に手をあげていたあの頃、家に帰ることが辛くて辛くて。
それでも私は、そこしか帰る場所がなかった。
だけど、こうして建築に携わることを決めたからには、子供部屋が辛いなんて言っているわけにもいかない。
「すみません、私……」
「紗知。なにがあったのかは知らない。
だけど前にも言った通り、お前は今、幸せに歩けているんじゃないのか?」
永沢さんの言葉に顔をあげられなくなる。
彼の言葉に勇気をもらったはずだった。
私は私の人生がある。
幸せなことだってたくさん……。
だからクライアントのお子さんに会っても楽しく過ごせたし、彼らの部屋を手掛けられることにワクワクもした。
それなのに、いざとなると。