アウトサイダー
「送ってくれて、ありがとう」
「あぁ」
私に視線を合わせることなく、太陽はそう返事をする。
私はチラッと彼の姿を見た後、ドアを開けた。
今晩の事は……忘れよう。
彼が言ったように、忘れるべきなのかもしれない。
バタン
ドアを閉めて、マンションへと歩き出す。
体が、震えているのが自分でものわかる。
だけど、私には振り返る権利なんてないのだ。
人通りのなくなった道は、ポツンと外灯の光がいくつか点在してかろうじて明るさを保っていた。
「紗知」
突然背後から聞こえた小さな叫び。
思わず足を止めて振り返ろうとしたとき、後ろからふわっと彼の匂いが降ってきて……。