アウトサイダー
「紗知……」
ギュっと抱き寄せられた体は、従順に――まるでそれが当然かのように、彼に溶かされて――。
泣きたくなってしまうのは、この場所が私の定位置ではないからだ。
少し荒い彼の息遣いが、私の耳に吹きかかる。
彼が私を抱き寄せる腕に力を込める。
私は、ただ立ち尽くして、彼の温もりを貪って。
あの時からなにひとつ変わらないのに、私たちを取り巻く環境は、一変してしまった。
ゆっくり私を解放した彼は、そのまま小さく言葉吐き出す。
「ごめん。もう、行って」
「――うん」
私はやっぱり振り向くこともせず、一歩を踏み出した。
振り向いたりしたら……きっと私は――。