アウトサイダー

「紗知?」


着替えもせずボーッと座り込んでいた私は、彬さんが帰ってきたのにも気がつかなかった。


「あっ、お帰りなさい」

「もう、寝てると思った。どうかしたのか?」


パチンとつけられた明かりは、私を現実に引き戻した。


「ううん。ごめんなさい。ちょっと疲れちゃっただけ」


ほんのりお酒の匂いのする彼から、背広を受け取ってハンガーにかけた。


「大丈夫か? 仕事、忙しいのか?」

「ううん、大丈夫。彬さんこそ、お疲れ様」



こんな風に優しく労わってくれる彼が好き。
優しい声で私を呼ぶ彼が……。


< 224 / 576 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop