アウトサイダー
「斉藤のところに届けて欲しいんだ」
「――えっ」
そこに行けば、きっと彼が……。
「どうした?」
「いえ……行ってきます」
仕事を断ることもできず、私は電車に乗っていた。
あれから、彼に会うのは初めて。
どんな顔をして会ったらいいのかわからない。
隣町だとはいえ三駅だけ乗ると、もうそこは……。
こんなに近くにいるのに、彼が遠い。
「こんにちは」
私は意を決してドアを開けた。
大きなビルの一角に、斉藤建築事務所はあった。
うちの事務所よりもう少しシャープなイメージ。
きっとこのビルも、斉藤さんが設計したに違いない。