アウトサイダー
「百合、あったぞ?」
てっきりひとりだと思い込んでいたのに、棚の陰から聞こえたのは……。
その声に、一歩も動けなくなる。
「太陽さん、池森さんよ」
無邪気にそう言う彼女に、思わず俯いてしまう。
「――池森、さんでしたか」
太陽は「紗知」じゃなくて、名字で私を呼んだ。
そんなの当たり前だというのに、ズドンと私の心の奥に大きな岩が落ちてきた。
ゆっくり近づいてきた太陽は、彬さんをチラッと見て頭を下げる。
「池森さんの……」
「初めまして、千島です」
「篠川です。池森さんには仕事でお世話に……」
「こちらこそ。紗知がいつもお世話になります」
そんなふたりの会話に、胸がチクンと痛む。