アウトサイダー
彬さんがポケットから差し出したのは……シワシワになった太陽の名刺。
彼が、握りつぶしたあとなのかもしれない。
普通の名刺なら良かった。
仕事で交換したと言えば……。
表に、太陽の名と事務所の住所、電話番号。
そして、彼の仕事用の携帯番号が印刷された名刺。
だけど、裏には……太陽が走り書きした、プライベート用の携帯番号が――。
彬さんはいったん表を向けて私に差し出した後、それ今度は裏返しにする。
そして、私を鋭い眼で見つめた。
いつ、落としてしまったのだろう。
そんなことを茫然と考えていた。
本来考えることはそんなことではないはずなのに。
その時の私は、それしか考えられなくなってしまっていた。