アウトサイダー

「紗知、今から出る。すぐに用意して」

「えっ?」


永沢さんが、泣き止んだ私にそう語りかけた。

それからすぐに「ちょっと待ってろ」と部屋を出て行った彼は、午後のアポイントのキャンセルの電話をしている。



「紗知とクライアントに会ってくる。
今日は戻らないかもしれないから、あとはよろしく」


それから彼は、丁度休憩から帰ってきた事務員にあとを頼んで、私を強引に事務所から連れ出すと、自分の車に乗せた。


「紗知。お前をこのまま辞めさせることはできない。
きちんと話をしよう」


一言だけそう言った永沢さんは、すぐに車を発進させた。




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