アウトサイダー

「おはよう」


ろくに眠れないまま朝を迎えてリビングに顔を出すと、もう永沢さんが起きていた。


「おはようございます」


永沢さんは朝日を浴びながら、窓に寄り掛かってコーヒーを飲んでいる。

事務所にいるときと同じ。
彼はコーヒーを口にしているときは、心ここに非ずという感じで、いつも遠くを見つめている。


「紗知も飲むか? あ、お前紅茶だな」

「いえ、コーヒーでも」

「どうせインスタントなんだ。遠慮はいらない。
そこにティーパックならあるから」


そう言われて、一人分の紅茶を淹れた。


私がテーブルにつくと、彼もやってきて向い合わせに座る。

同じ家に私と永沢さんがふたり。
こんな光景、とても奇妙だ。


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