アウトサイダー
「紗知?」
茫然としている私に、声をかけたのは永沢さんだった。
「紗知、どうしたんだ?」
そんなに優しい声で私の名を呼ばないで欲しい。
やっと留めている涙が零れてしまうから。
バタンと閉まったドアの音。
その直後、私は彼の腕の中にいた。
「なぁ、紗知。そんなに辛いなら、俺にしないか?」
辛い?
そう、辛かった。
こうしてやっと実現しそうな夢も、私たちが住むものではない。
「ってかっこ悪いな、俺。紗知を応援するって言ったのに」
私は小さく首を振った。
永沢さんの優しさが、痛いほど伝わってくる。
自分が好きな女が、別の男と会ってこうして涙を流して……。
私の方が身勝手だ。
私の方が酷い女。