アウトサイダー
打たれる頬
そして、金曜がやってきた。
あれから斉藤事務所とのやり取りは特になく、もちろん太陽からの連絡もなかった。
「悪いが今日は先に帰る。後は頼んだ」
永沢さんがこんなに早く帰ることは、私がここに来てから数えるほどしかない。
私はほとんど定時での帰宅を許されていたから、皆が私とのデートだろうなんて噂しているのを知っていた。
だけど……。
「紗知。自分に嘘だけはつくな」
「――はい」
永沢さんに何度も諭されて、覚悟は決まっていた。
永沢さんがそうだったように、他の人を思い続けたままの結婚が幸せだとは思えない。
私だけでなく、彬さんも。
きっといつか、彬さんをひどく傷つけるだろう。