アウトサイダー
コウさんは彬さんに居場所がばれないようにと、ひとりで元のマンションに住み続けた。
そして、念のためこちらの部屋に来ることもなく少し寂しい思いをした。
マンションに私を連れ戻しに来た彬さんを、ぶん殴ってやったなんて電話口で言われたときには驚いた。
温厚なコウさんには似合わない行為だ。
それでも、とてもうれしかった。
あの住み慣れた街から少し離れたこのアパート。
もう、もしかしたら戻れないかもしれない街のことを思い出して、胸が痛む。
いつも、手に入れたと思った安住の地は、するっと腕の中から逃げてしまう。
けれど、どの街にもそれぞれ思い出があるのだ。