アウトサイダー
永沢さんに促されて注意深く観察していくと、いくつものライトが効果的に使われているのがわかる。
ある一点でわざと交わるように照らされたその中心に、重厚なソファーが置かれていて、決して眩しくなくそれでいて周りからは浮き上がって見えるようなそんな仕掛けもされている。
気が付けば永沢さんのことなんて放っておいて、あちこち「へぇー」とか「はぁー」とか訳のわからないため息をつきながら、店内を一周していた。
クスクス笑う声に気が付いて足元のフットライトから顔を上げると、永沢さんがすごくおかしそうに私を見つめる。
「紗知、本当に好きなんだな」
「えっ?」
「紗知を採用してよかったよ。
たとえ痛い失恋が待っていてもな。
そろそろ行くぞ?」
どうしてこの人はこんなに大人なのだろう。
私とは違って、正直でありながらそれでいて引きどころまで心得ていて。
辛いとわかっているのに、自分から顔を突っ込んで。
そんなこと、私には到底できない。