アウトサイダー

「仕方、ないな……紗知、降りて?」


車の中を覗き込んだ永沢さんは、私にそう訴える。


「午前中は篠川くんと打ち合わせ。
午後からこっちも手伝ってほしいから頼んだぞ」

「えっ……」

「篠川くん。彼女はお母さんから俺が責任を持って預かった。
わかってるな?」

「はい。ありがとうございます」


「それじゃ」と永沢さんは車を発進させた。
永沢さんの車を見送ると、太陽は私を抱き寄せる。


強く。
とっても、強く。


「紗知……」

「太陽」


もうそれ以上、なにも言えない。

ずっと、ずっと彼の腕に抱かれることを夢見てきた。
それが今、こうして……。


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