アウトサイダー

「座って? あ、オレンジジュースないや」

「もう、そんなに子供じゃないもん」


あの頃の空気が私たちに戻ってくる。


「紗知が飲めるのは……紅茶しかないや。
ミルクないけど飲めるよな?」

「当たり前だよ」

「なにが当たり前だよ。紗知のくせに」


ふたりでじゃれ合っていたあの頃。
私たちは大人のふりをして、コーヒーや紅茶を飲んでいた。

ブラックのコーヒーを余裕の顔で飲んでいた太陽。
そして、どうしても苦くてミルクをたくさん入れていた私。

結局、ミルク入りのコーヒーすら飲めなくてミルクティに変えてしまう私を、大人の顔をした太陽は笑ったっけ。


あの頃の小さな思い出がよみがえる。


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