アウトサイダー

「おはよ」

「おはようございます。昨日は無理を言ってすみませんでした」

「そうだな。おかげで大忙しだ」


永沢さんはフッと笑いながら私を見つめる。


「それで?」

「紗知は俺に下さい。
永沢さんには彼女を守っていただいて感謝しています。
だけど、どうしても……」

「それは紗知が決めることだろ。
そして、残念ながら紗知はもう決めている」


彼の言葉に私たちはなにも言えない。


「紗知、よかったな」


優しすぎる。
永沢さんは、優しすぎるよ。


「篠川くん、もう二度とチャンスはないと思え。
君が紗知には力不足だとわかったら、今度は渡さない」

「はい。わかっています」

「それじゃ、斉藤によろしく」


永沢さんは私を目で促して事務所に戻る。
太陽がその後ろ姿に、深く一礼した。


< 475 / 576 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop