アウトサイダー
「おはよ」
「おはようございます。昨日は無理を言ってすみませんでした」
「そうだな。おかげで大忙しだ」
永沢さんはフッと笑いながら私を見つめる。
「それで?」
「紗知は俺に下さい。
永沢さんには彼女を守っていただいて感謝しています。
だけど、どうしても……」
「それは紗知が決めることだろ。
そして、残念ながら紗知はもう決めている」
彼の言葉に私たちはなにも言えない。
「紗知、よかったな」
優しすぎる。
永沢さんは、優しすぎるよ。
「篠川くん、もう二度とチャンスはないと思え。
君が紗知には力不足だとわかったら、今度は渡さない」
「はい。わかっています」
「それじゃ、斉藤によろしく」
永沢さんは私を目で促して事務所に戻る。
太陽がその後ろ姿に、深く一礼した。