アウトサイダー
唯一の希望。
まだ私にも、建築にかかわることができるのだ。
建築士は所長だけで、あとは手伝いの人がひとりだけの事務所で、今までとは比べ物にならないくらい小さな仕事しかなかった。
それに、事務として採用された私の仕事の大半は、いわゆる雑用だった。
だけど、ほんの少しでも建築にかかわることのできる喜び。
近くに図面のある幸せ。
だって空想することは自由なのだから。
我武者羅に働いた。
少しは貯金があるとはいえ、子供を産んでひとりで育てるというのは、きっと並大抵のことではない。
今のうちに少しでも……。
母があの時――父から逃げたとき――きっとこんな覚悟があったのだと、身をもって知った。