アウトサイダー
「とりあえず、あの家を見に来ないか?」
「えっ……」
「篠川くんも紗知に見て欲しいはずだ」
永沢さんの言葉に簡単には頷けない。
だって私は、あの家も含めて全部捨てて逃げたのだから。
そんな私が、太陽が必死に造り上げた家を見る資格なんて。
「紗知。もういいんだよ。
ひとりで頑張らなくても、いいんだよ?」
永沢さんのその言葉に、涙が止まらなくなる。
本当は辛かった。
この先子供を抱えてひとりでやっていけるのか。
こんな私が母親になれるのか……。
そんなことを考えて毎日泣いていたのだから。
「みんな紗知の味方だ。
お前はもう、アウトサイダーなんかじゃない」
結局私は永沢さんの言葉に頷いてしまった。
もう我慢できなかった。
私たちの夢が現実となっているのに、それを見ることすらできないなんて。
ほんの少しだけ、見るだけでいい。
私たちの夢が実現したあの家を。