アウトサイダー
約束の鍵
私を乗せた車は、ほんの少し前までいたあの街に滑り込む。
あの住宅地が近づくのがわかって、涙をこらえられずに声をあげて泣いてしまう私に、そっとハンカチが差し出された。
「辛かったな」
永沢さんのその言葉に、今までの思いが溢れてくる。
この街を出てから、決して順調ではなかった。
仕事があったのは幸せだった。
だけど……無理をしたせいか、何度も流れそうになって、それでもこの子を育てるには働くしかなくて。
そんなことの繰り返しで、毎晩のように泣いた。
私はこの小さな命すら幸せにできないんじゃないかって。
本当に産んでもいいのかと。