アウトサイダー

「そのあとすぐに仕事に出たんだけど、帰ってきたら電話があって」

「うん」

「紗知を貸してやるって。永沢さんから」


泣きそうだった。
斉藤さんと永沢さんの優しさに。


この街に戻ってきてから、永沢さんはまた私を雇うと言ってくれた。
すごくありがたい話だった。
私はやっぱり建築が好きだし、できれば太陽と同じ仕事を続けたかったから。


だけど、光の出産をとにかく優先した私は、一度はその話しを断った。
それならと、驚くことに雇った上で産後休暇と育児休暇をくれたのだ。


そして間もなく育児休暇が終わるはずの私に、さらに在宅勤務まで認めてくれて。

どれだけ恵まれた環境で生きているのだろうと思うと、ずっと苦しかった日々すら忘れられそうだった。


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