アウトサイダー
抱いて
太陽がバイトから帰ってくるのが、すぐにわかる。
独特の足音。
いや、別になんの変哲もなかったかもしれない。
ただ、太陽だったから分かったのかも、しれない。
トントンと階段を上がってくるその音で、私は慌てて部屋を飛び出した。
「おかえり」
「ただいま。どうした、紗知?」
優しい音色だった。
もうこの声を聞けなくなるんだと思うと、たちまち目に涙がにじみ出してくる。
「どうもしてないよ。太陽、お部屋に行ってもいい?」
「何を今更。いつも勝手に入るくせして」
違うの。
今日は特別なの。
そんな言葉を押し殺して、私は太陽の部屋に上がった。