アウトサイダー
「えっ……」
すれ違いざまに私の手首をつかんだ彼の力は、思ったよりずっと強くて。
「紗知……」
耳元でやっと聞こえるくらいの声を吐き出した彼に連れられて、元来た道を戻ることになった。
そのまま無言で私の手を引っ張り続ける彼。
泣きそうだった。
もう二度と会うことはないと思っていた彼に、こうして手をひかれている。
私の事なんて、気がつくことなく去っていくとばかり思っていたのに。
どんな繁華街でも、人の全くいない場所があるのだと分かった。
デパートとデパートの隙間。
ほんのわずかしかないその場所に彼は私をひきこんだ。