アウトサイダー
「ある?」
私の真剣な眼差しに、これが冗談ではないことを悟ったのだと思う。
彼は真っ直ぐ私を見つめて口を開いた。
「ない、よ。
俺が最初に抱くのは、紗知って決めてるから」
うれしかった。
彼のこの言葉が、どれだけうれしかったか。
どれだけ私を幸せにしてくれたか。
今日だけでいい。
これからずっと、社会のはみ出し者として生きていったっていい。
だから、今だけ、ごく普通の幸せを味わいたい。
私は誰かと繋がっているんだって感じたい。