アウトサイダー
ドアが閉まった音とともに、私はすべてを失った気がしていた。
大切な宝物が――私から遠ざかっていった。
ほんの少しの荷物の中に、彼との思い出はたった一つだけ。
誕生日に買ってくれた、キーホルダー。
だけど、私の心の中はいつだって彼でいっぱいだ。
迎えに来てくれた役所の人と慌ただしく、それでいて静かに部屋を出る。
さようなら
太陽の家の前で一瞬だけ立ち止まって、その古ぼけたドアを見つめる。
飛び出して来てくれないだろうか。
私をさらってくれないだろうか……。
けれど、そんなことが起こるはずなく――。
「紗知」
悲痛な面持ちで、それでも私を呼ばなくてはならない母の苦痛を思うと、離れざるを得なかった。