小さい秋みつけた
小さい秋みつけた
「なぁ、なんで?
あんたなんでうちと付き合お思たん?
うちらってなんやったんやろ…」
「ほな訊くけど…自分はどうなん?」
「どうって、何がよ?」
「もうええわ…」
「ええことない!
あんたなぁ…
一遍でもうちのこと好きやて言うてくれた事ある?」
「アホかお前…
何遍も言うてるやんけ!」
「いつよ…?
…いつですか!?
この前のうちの誕生日ですかー?
去年のクリスマスでーすーかー!
…うちらもう付き合い始めて二年よ…。
……… … …………
なんか、ちゃうねんなぁ…。
あんた…変わってもうてんもん」
「そんなん、お互い様やん…。
ひょっとして自分…
変わってないとか思てんちゃう?」
「うるさいわ…どこがじゃ!」
「じゃ…ってなんやねん!
自分、おっさんか!
俺、女がそんなん言うん嫌やなぁ…」
「あんたも言うてんちゃうん!」
「俺はええの…」
「うちが嫌やったら他に彼女作りーや…
うち全然かまへんよ?」
「な、なんで…そうなんねん」
「知らんよ…。
大体…なんでこんなとこに呼び出したん?
玉飛んできてぶつかったらうちの体弁償しいや!」
「その前に玉拭いたらんとなぁ…」
「あほ…」
「俺な…?
…ここが好きやねん。
ここに座っとったら駅から歩いて来る人がよう見えるやろ…。
雨上がりなんかなぁ…
みんな西陽にキラキラ光ってな…。
うち、オカン働いとったやろ?
保険のセールスやってん。
早よ帰る時もあるけど、日が暮れてまう時もある…。
ほんでな…?
俺、いつもここに座ってオカンを待っとった。
ドキドキしてなぁ…。
今度こそ、あれ、そうちゃうか…って。
ほんだらな?
しまいに日ぃ暮れてもうて見えへんようなってまいやがんねん。
……
オカンがもしおったとしても…
今はもうせえへんけどな…」
「しょーもな!
何よそれ」
「そやねん、しょーもないやろ…。
俺、それぐらいオカンが好きやったんよ…小さい時。
ほんでな?
オカンや…って分かったら急に嬉しなってな…
急いで走って帰っとった…。
ほんでな、オカンがただいま…言うても無視したんねん。
ごっつ嬉しいくせに
…無視や。
嬉しいねんけど…
なんや知らん……」
「…もうええわ。
あんた、うち泣かす気やろ…。
…うち多分泣いてまうわ」
「あんな?
泣くんはええねんけど…
自分…
………
その化粧何とかせーへん?」
「えええ?……出た!!
…何よそれ!!」
「前から言おう思とってんけど…
自分…
化粧ケバない?
…俺らまだ高一やで」
「阿呆らし…いうか…めっちゃむかつくし!!
あんたそんなこと言いにわざわざうち呼び出したんかいな」
「ちゃうねん、自分な……
……………………
素っぴんが一番綺麗や思う…」
「ひゃ─、気色わるっ!
見て見て!…さぶいぼや。
あんた、おかしんちゃうん?」
「ほなもっとおかしなんで?」
「なに?
………………
なにーよぉ。
…………
さわりなや…
………
ちーかーいーって…
ほんま…
何すんねんよ…」
「痛っ!
おもくそたたかんでええやんけ…
そんな気色悪かったら、新しい男作ったらええねやし…
そーしー?」
「しょうもな」
「…んま、痛いのー…
血ぃ出てるやんけ!」
「出るかぁ、あほ!」
「急に暗なったなぁ?
あいつらも帰りよったし」
「日ぃ、短かなったね…」
「そやな…」
「なんやよう分からんけど…
…うちも帰るわ…」
「おっ…、ほなな…」
「明日も一緒に黄昏たってもええよ?」
「はよ帰れや!」
「もうちょっとおったろか?」
「おっていらんわ!」
「無理しなや?おって欲しいゆい!」
「ミキぃ~、だのむ、行かんどっでぐで~」
「おっさん眠たいんか!」
「だれがおっさんやねん、も、はよいねや!」
「ほんまに帰んで…」
「お…またな」
「うん」
「好きや言うて欲しかったらなんぼでも言うたんぞ!」
「あほ」
小さい秋見つけた
──────── 完