同じ顔の二人の彼
背中
「ただいま」

「おかえりぃ」


キッチンから顔だけ出すと、ネクタイを緩めながらこっちへ歩いてくる彼




うっとりするくらい色っぽい彼に、お鍋をそのままに飛び出して抱きついた



「ねー、今日泊まっていい?」




彼の背中に手を回しながらおねだり



だけど…

何か違和感を感じて顔をそっと見上げる




「俺は大歓迎だけど?」

「えっ?拓さん!?」




慌てて離れると「バレたか残念」と悔しがる顔




「もぅ!陸と拓さん似すぎ!」


「しょうがないじゃん双子なんだから。さて、着替えて来よう」




拓さんが部屋へ戻るのを確認して、キッチンへ戻る







火にかけた鍋を見つめながら、未だドキドキする胸に手をあてる。




顔も声も同じなのに、体は拓さんの方がガッチリしてる……





SEの陸と職人の拓さん。
昔から中身は全然似てないって言ってたっけ






未だ体に残る感覚を思い出すだけでカーッと熱くなる


「どうかしてる」





「何が?」

「キャッ!」



誰もいないと思っての独り言だったのに、いつの間にか背後には拓さんが立っていた。



「上手そうな匂いしてると思って来たら、一人で百面相してたよ?」



意地悪そうな顔で覗き込む拓さん。




「拓さん…近い」


「あーごめん。ね、昔さ背中に書いた文字を当てるってゲームやらなかった?」



「や…やりましたね……それが何か?」

「じゃあさ、今やろ?俺が先ね」


「えつ?」



戸惑う私を全然気にせず、「あっち向いて」と私の肩を掴んでクルリと回した。



「じゃあ、最初は…」



ツーッと背中に拓さんの指が走る。

くすぐったさを堪えようとすると、余計に拓さんの指に背中の神経が集中し始める。





「さぁ、何だ?」

「……き?」

「ピンポーン、次」



再び触れられると、今度は一気に指に神経が集中する。


「す?」

「正解」

「し」

「た?」




「じゃあ、最後」


触れられる度、集中する神経。離れると少し淋しい


「い?」




「最初から言ってみて?」


「き  す   し  た……」




最後の文字を言い終わらないうちに、私の体は拓さんへと向いていた。

唇に温かいものが触れた瞬間、キスされたのだと分かった。





そのキスは、私が経験したことのないキス



まるで私自身を食しているかのよう



あまりに強引で、それでいてうっとりするような快感を与える彼のキスに、立っていられなくなる



「っと、危な。キスしたいって言ったのそっちだよ?」


「……ヒドイ」



「嘘。ごめん」








彼の腕の中で私はその先を欲している――








「今夜兄キ、遅いんだって。同じ顔してるから代行してあげる」
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