時を戻して 《TABOO》
しばらくして料理が運ばれてきた。
まさに芸術の域に達した料理。
味は勿論のこと、一皿一皿が鮮やかに彩られている。
隆との親密さを見せつけようと口に運ぶ度に感嘆の声を上げた。
だが、酔いのせいか次第にかつての二人が甦った。
そう…この料理のように私の体を丁寧に扱った彼。
薄明かりの中で、体を這う指が脳裏を過ぎった。
――あんなに愛し合ったのに…
「美味かったね」
と白い歯を零す隆の声にハッと我に返る。
眼には光るものが溜まっていた。
何も知らない隆を前にして、涙をこぼすまいと化粧室へと席を立った。