時を戻して 《TABOO》
鏡に映った自分に問いかける。
幸せな姿を彼に見せつけてやるんじゃなかったの、と。
造作もない事だと思っていた。
だが、目論んだ復讐劇は未練が招いた妄想でしかなかった。
その証が止めどなく溢れる涙…
結局、私はまだ彼を忘れてはいなかった。
隆に甘えては、ずっと彼を想い続けていたのだ。
夜毎、肌を重ねる時でさえも…。
あんなに優しい隆を騙し続けていた。
彼じゃない。
恨むべきは…自分の愚かさだ。
戻ると同時に隆が席を立った。
「もう帰ろ。」
「誘ったの私だから払うね。」
と言うと、隆は耳元で囁いて出て行った。
「店を出てくるのなら、俺だけを見てくれ。」
――隆?
言葉がなかった。
いつから?
店に来てから?
気付いていた。
知っていて付き合ってくれてたのだ。
しかも、隆はそれでも待つ、と。
振り返ると見つめる彼。
残るべきか出るべきか
私は…
END