TABOO Ⅱ~甘い唇~
ドアを開けると、盛り上がっていた場が一瞬静かになった。
「ゴッドファーザーです」と蜜色のグラスをテーブルに置くと、「サンキュー」と斜めから伸びてきた手。
早速うまそうに口を付ける男を見て、心の中で舌打ちする。
こいつのだったら、タバスコでも混ぜときゃ良かった。
店員がそんなことを考えてるなんて知るよしもなく、男が傍らの女に「何飲む?」と優しく声を掛ける。
つられてそちらへ顔を向けると、一瞬目が合った後、「まだあるから…」と不自然に逸らされた。
「失礼しました」
丁寧にお辞儀をしてドアを閉めると、2度目の舌打ちをした。