光の花は風に吹かれて
「同じことを……言うのですね」

セストはソファの背もたれに首を預けて天上を見上げた。

――きっかけが偽りでも、ローズさんの行動は本物。

――ローズがこの城に来て過ごした時間は何だ?

レオもリアも、“今”のローズを見ろと。

けれど、その“今”が育ったのは偽りの種があったからで。偽りの上に成り立つ真実があると信じろと言うのは無理がある。

今、ローズとセストの関係は利用された人間とした人間、それだけだ。

ローズはもう夢の中を彷徨う子羊ではない。

彼女はセストに失望し、ルミエール王国へ帰る。それでいい。

それでいいのに、どうして――ローズはまだセストを追いかける?

これ以上、セストに何を求める?

なぜ、ローズのことを考えて眠れない?

あぁ、バラの茎が絡みつく。

セストを逃がしてくれない。

痛い。苦しい。恋しい。

もう、偽りの花は刈り取ったのに――
< 102 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop