光の花は風に吹かれて
「――ト――――セスト!」

一際大きく響いた声にハッと目を開ける。

「あ……ごめん」
「大丈夫?」

イヴァンがセストを覗き込んでいて、解決方法がわからぬまま3日目の朝を研究室のソファで迎えたことに気づく。

心配そうなイヴァンに「大丈夫だよ」と笑い、身体を起こした。研究室のソファはスペースの関係で少し小さめで、身体のあちこちが痛む。

首を回して立ち上がると少しふらついて、イヴァンに肩を掴まれた。

「全然、大丈夫には見えない。俺が研究室に来る時間、知ってる?いつ寝たの?」
「……そんなのイチイチ覚えていないよ」

本当は覚えている。

明け方まで眠れなかった。

とっくにいつもの起床時間を過ぎていることにも気づいていたのに、重い頭と身体を起こすのが億劫でそのまま横になっていたら少し意識が眠りに落ちたようだ。

だが、10分も眠っていない。

ずっと、ローズのことを考えていた。

今までのことが嘘のように、ローズと会わない。セストが避けているのだから当然だ。

そう考えて、セストはフッと笑った。

避けようと思えば、可能だったのだ。それをしなかった自分は――

「ごめん。顔洗って着替えてくる」

イヴァンの手をそっと除け、セストは研究室を出た。
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