光の花は風に吹かれて
「私は“今”、セスト様に恋をしているのです。私に向き合って、触れて、話し掛けてくださるセスト様に」

今――肌で感じる現実。

「セスト様のことが、好きです。貴方の花が私へと向かって咲いてくれる可能性があるのなら……もう少しだけ、私の光で育ててみたいのです」

ローズの琥珀色の瞳は潤んでいても、セストを真っ直ぐ見て、映している。ローズはしっかりと今を生きている。夢と現実の境界線がわからなくなっていたのはセストの方で。

種を蒔いたのは――セストに真っ直ぐな心(タネ)を与えてくれたのは――ローズの方なのかもしれない。

「最初にお会いしたとき、セスト様は花が咲くかもしれないのなら見届けると言って下さいました。私の花はもうとっくに咲いています」

ローズの頬にまた一筋の涙が道を作る。セストはそれを親指で拭った。

すると、ローズが泣きながら微笑んで。

「花は、咲いて終わりではないのですよ?散るまでちゃんと見届けて下さ――きゃっ」

ローズの言葉の途中で急に身体を起こしたセストに驚き、小さく悲鳴を上げて背を反らせた彼女の腰に手を回す。

それから、ローズの涙を拭って頬にくっついた髪の毛を耳にかけてやった。

「髪の毛、伸びましたね」
「……もうすぐ、半年ですから」
「えぇ、そうでした」

ずっと、一途にセストだけを見てくれていたローズ。セストのために咲かせた輝く恋の花。
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