光の花は風に吹かれて
ローズと所謂“恋人”という関係になってから、数ヶ月になる。

セストの予感通り、セストは素直で純粋なローズにどんどん惹かれていることを実感している。当たるのは悪い予感だけではないらしい。

だが、ローズの方はどうなのだろう?

一緒に過ごす時間は確かに増えたけれど、同じ城内にいるというのに仕事ばかりで食事と寝る時間くらいしか共にできないことに不満があるのではないかとか、今まで気にしたことのなかったことが気になって仕方ない。

「私と結婚するのが嫌ですか?」
「そんなことっ!」

ローズの答えも聞かないまま、どちらかといえばローズ本人ではなくエミリーに対して結婚宣言をしてしまった。だが、ローズは首を振る。

「では、プロポーズの仕方が悪かったでしょうか……」

セスト自身、城の廊下で、しかもエミリーに結婚を急かされたような形になったのは良くなかったと反省している。

本来ならきちんと指輪でも花束でも、プレゼントを贈り、もう少しきちんとした場所で告げるべき事柄だ。

「そういうことではないのです!」
「では――」

“なぜ”と聞こうとすると、ローズはギュッとセストに抱きついてきた。
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