光の花は風に吹かれて
「セスト様は何も悪くないです。結婚してくれると言って下さったことも、嬉しかった。問題は、私にあるのです」

問題――あぁ、そうか。どうしてそこに気づけなかったのだろう。

セストはそっとローズの頭を撫でた。

「結婚の意味は……それだけではないのですよ。少なくとも、私にとっては」

そう言うと、ローズは更にギュッとしがみつく様に腕に力を込めた。

「違うのです。子供のこともそうですけれど、私は1度結婚をしていて……後宮に戻っています。そんな王女と結婚なんてセスト様が皆様にどう思われるか……」

それを聞いて、セストは軽くため息をつく。

「それこそ、どうでもいいことです。私は自分のやるべきことはきちんとやっていると自信を持って言えますし、側近としての評価以外はどうでも良いことでしょう?それに、レオ様はそんな下品な噂をするような人間を部下として置いたりしません」

セストはローズの額にキスを落とし、少し屈んで額をくっつけた。

「大切なのは、貴女の気持ち。貴女が結婚したくないというのなら、私はそれでも構いません」

ローズから嫌だと言われない限り、セストから手を離すことはもうないだろう。

「貴女が“妻”でも“恋人”でも私の気持ちは変わりません。いえ……貴女も気づいていらっしゃるでしょう?私の花が育っていること。強いて言えば……貴女が私の妻という正式な肩書きを手に入れたら、誰も文句は言えなくなる、ということでしょうか」

“誰も”というところを強調する。

「さぁ、どうしますか?」

クスッと笑うとローズは上目遣いでセストを見上げる。
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