光の花は風に吹かれて
「……跡継ぎも、いらないのですか?」

結婚=子供を産むという刷り込みのようなものがあるのだろう。ローズはその琥珀色の瞳を揺らがせた。

「小さな花をもう1本、貴女と育てるのも悪くはないでしょうね。でも……」

セストは軽く唇を合わせてから、ローズを抱き寄せた。

「私には綺麗な花がいつも寄り添ってくれていますから。十分だと思いませんか?」
「セスト様……」

ローズは震える声でセストの名を呼んで、背中に腕を回してくれた。

「それからもう1つ、大切なことをお教えします」
「きゃ!?」

セストがひょいっとローズの身体を抱き上げれば、ローズが小さく悲鳴を上げてセストの首にしがみついた。そのままベッドへと小さな身体を降ろし、向かい合って座る。

近い距離――ローズは頬を染めて、セストの胸を押し返そうとした。その手を絡め取って手の甲にキスをすれば、ピクリと彼女の身体が跳ねる。

少し怯えた様子のローズにセストはフッと笑う。ローズがそれを怖がっているのはなんとなく知っていた。

一緒に眠ることも多くなったけれど、セストが抱き締めようとするといつも震えるから。それ以上求めたこともなかった。

「怖いですか?」

そう聞くと、ローズはキュッと目を瞑って首を振った。

「ローズ……目を開けて。怖くないことを、教えますから――…」

まぶたにキスを落とし、セストはゆっくりとローズの身体を押し倒した。すっぽりとセストの影の中に光の花を隠すために――…
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