光の花は風に吹かれて
「貴女は、子を授かることのできる健康な女性ですよ」
「え……?」

ローズは突然の“診断報告”に目を見開き、そして首まで真っ赤になった。

「な、そ、そんなっ、ことを――っ」
「すみません。職業病、とでも思ってください」

セストは苦笑いで謝る。本当は、ローズがとても気にしていたから……きちんと診断したかったのだけれど。それは言わないでおこう。

「私はクラドールで、もちろん理論を信じておりますけれど……それでも、生命というのはそんな文字の羅列など通じない場面もたくさんあるのです」

“理論的”には子供ができる状況でも、なかなか妊娠しない場合もあるし、どんなに健康だと思われていた命だって突然消えてしまうこともある。

「新しい命に関して個人的な意見を言えば、タイミングもありますし、相性というのか……そういったものもあると思っています。そして何より、“母親の気持ち”でしょうね」

ルカはリアの気持ちをよく理解している。彼女が身ごもっていたことを隠し通せたのは、ルカがリアの不安をわかっていてリア以外に声を届けることがなかったからだ。

ルカは確かに王家の子として特別なところはあるが、多かれ少なかれ、血筋など関係なくそういった母親との繋がりはあるのだとセストは思う。

だから、ローズがパトリスの子を身ごもらなかったのは……ローズがそれを望んでいなかったからではないかと思ったのだ。
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