光の花は風に吹かれて
『とー?』

研究室の机に突っ伏したセストの髪を、ふわりとルカの風が撫でる。

「……リア様」

顔を上げるとリアが苦笑しながら席に着いた。

「外にローズさんがいらっしゃいましたよ?夕食を一緒に食べたいって」
「はぁ……」

ローズがヴィエント城に住み始めて数週間。毎日のように纏わりついてくるローズにさすがに疲れてきた。

研究室にはクラドールしか入れないため、ここは唯一の安らぎの場だと言える。だが、リアの言うように1歩外へ出ればローズが待っている。

「あんなに熱烈にアタックされて、何が不満なの?」

セストの向かいの机で報告書をまとめていたイヴァンが顔を上げる。

「仕事に差し障るでしょ」
「どういう意味で?」

からかうように言われ、セストはイヴァンを睨み付けた。イヴァンは肩を竦めて、書類に視線を戻した。

「でも、どうしてローズさんはセストさんのことを知っていたんですか?」

リアの問いにセストは言葉に詰まった。リアに教わった記憶修正を、悪用――というのも語弊があるのだが、リアの望む使い方とは違うように利用――したとは言えない。
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