光の花は風に吹かれて
ふと、目を開けてそれが夢だったことを知る。

セストは上半身を起こして息を吐いた。

一体何度目だろう。

ローズが城へやって来てから、彼女と会った日のことを何度も夢に見る。夢に囚われているのはセストなのではないかと思うほどに――

ルミエール城へと潜入するとき、書庫を開けるために必要なチャクラと血を調達するのは後宮が良いと目星をつけていた。

扉は光属性のチャクラにのみ反応し、更に国王の血で呪文を書き記すことで開く。

当時の国王ダミアンの血を引いていて、且つ比較的簡単に接触の出来る人間。ルミエールの王女たちは揃って後宮から出たことのない娘ばかりで、所謂世間知らず。扱いやすいと思ったからだ。

その中でも、傷心のローズと遭遇できたのは幸運だった――あのときは、その程度にしか思っていなかったのだ。

最初は戸惑いを見せていた彼女も、セストが優しく微笑みかけて同情を見せたら心を開いた。

だが、セストが彼女に触れたときはとても怯えていたのを覚えている。
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