光の花は風に吹かれて
セストの調べでは、ローズは23のときにルミエール王国議会の議長を務める男の息子に嫁いだ。

その議長とやらは当時の国王ダミアンと“繋がって”いたようで、かなり良い待遇を受けていたが、その息子とローズの結婚生活は3年と少し経ったところで終わっている。つい最近の話だ。

また、それと時を同じくして議長がその役職を追われていることも少し気になるところ。何かダミアンの機嫌を損ねるような問題でも起こしたのだろうか。

ちょうど後宮に戻ったばかりだったローズは、後宮近くの庭の隅で泣いていた。

なぜだろう。

今まで思い出すことなどなかったはずの彼女の涙で濡れた表情を、今は鮮明に思い出せるのだ。

先日、自分が泣かせてしまったから――?

セストはふるふると頭を振ってベッドから降りた。

考えるべきことはそんなことではない。

とにかく、ローズを説得してきちんと彼女の“これから”をセッティングしなければならない。

セストの責任は、ローズへ施した呪文を解除し、真実を伝えて、自分の蒔いた種を収穫すること。サッサと済ませればいいものを、無邪気なローズを目の前にすると戸惑われて。

すべてを知ったら、彼女はセストを……

「軽蔑、するでしょうね」

フッと息を吐いてクローゼットを開ける。

利用されたと知って嬉しい人間はいない。すぐに偽りの気持ちも捨てることができるだろう。

そうしたら彼女はルミエール王国へ帰るのだろうか。窮屈な後宮へ――
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