光の花は風に吹かれて
一緒に食事をするのもすでに日課となった2人だが、ローズが食事そっちのけでセストに話しかけ続け、セストが「えぇ」「まぁ」「はぁ」と時折短く答えつつも栄養を摂取することをやめないのは変わらない。

「セスト様、私、今日はプリンを作ろうと思うのです!セスト様はプリンお好きですか?」
「まぁ……出されれば食べますが」

好きというより嫌いじゃないという方が正しい。

「良かった!この前、おいしそうに食べていらしたからそうだと思ったのです」
「はぁ……」

おいしそうに食べた覚えはないが、とにかくローズにはそう見えたらしい。

しかし、そもそも後宮で蝶よ花よと育てられたこの王女に料理ができるのか、疑問である。

それに……

「ローズ様、今日の厨房は忙しいですので、ローズ様がプリンをお作りになる時間はないかと思います」
「そうですか……」

ローズは残念そうに眉を下げたが、すぐにパッと笑顔になって顔を上げる。

「それなら、ケーキ屋さんにまた行きませんか?この前はケーキしか食べませんでしたけれど、あそこのお店はプリンもおいしいのだと、侍女の皆さんが教えてくれたのです!」
「はぁ。ですが、今日は仕事が詰まっておりますのでケーキ屋さんには行けません」

いつのまにか侍女とも仲良くなったローズは、彼女たちからあれこれと城下町の情報――主にスイーツに関するものだが――を仕入れてくる。
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