光の花は風に吹かれて
食堂に残されたのは、レオの許可が下りて満面の笑みを浮かべたローズと食事をしただけなのに疲れきった顔のセスト。

「セスト様?私、パーティにはたくさんお呼ばれしたことがありますし、大丈夫ですよ」

大丈夫ではない。

エミリー女王がローズを見つけたら、きっと姉妹喧嘩――おそらくエミリー女王が一方的にローズを怒るだろうけれど――に発展することは必至。

交流会でそんな揉め事を起こされるのは困る。

「貴女は、ルミエール王国では療養中となっていらっしゃるはずです。それなのにヴィエント王国で交流会に参加など……」

本人はやめたと言い張るが、ローズはルミエール王国の王女。嘘の療養がバレる上、きちんとした理由もなくいつまでもヴィエント王国に滞在していることが知れ渡るのは良いとは言えない。

「治ったと言えばいいのです。クロヴィスも来るのでしょう?彼は優秀ですから、エミリーにもきちんと説明してくれるはずです」

ニッコリと笑顔を向けられて、セストはこめかみを押さえた。

あぁ、今日は頭痛薬も飲まなければいけないのだろうか。

「はぁ……承知しました。ドレスは侍女に手配させます。作法はルミエールとさほど変わりありませんし、貴女がルミエール出身だということはすぐに皆がわかりますから心配ありません」

彼女の気は明らかに光属性だ。ローズの姿を見たことがない者だって、交流会に来ている光属性の女性となれば限られてくるし察するだろう。

セストは大きく息を吐いて喜ぶローズを見つめ、もう1度小さくため息を零してから食堂を後にした。
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