光の花は風に吹かれて
その日の夜。

次々と城へやってくる貴族たちを迎え入れ、その波が途切れたところでセストはひっそりと息をついた。

いつもの何倍も疲れた気がする。

通常業務は急ぎのもの以外明日へ回し、交流会の準備を進めていたのは良い。だが、その間にもローズは何かとセストの元へ来て、ドレスやアクセサリーについての意見を求めてきた。

更に昼食をとる暇もなく働いていたら無理矢理食堂に連れ込まれ、食事をさせられた。実際、その時間のロスは準備がギリギリまで終わらないという形で表れ、セストは冷や汗をかいた。

「セスト様」

その声に、そろそろ厳しく言い聞かせなければと顔を上げて……しかし、言葉は出てこなかった。

淡いオレンジ色のロングドレス。ワンショルダーのストラップには花が連なっていて、胸下の切り替え部分はシルバーのレースラインだ。

ショートの黒髪は前髪部分を編み込んでピンで留められ、毛先が少しだけ巻いてある。

化粧だけのせいではない、ローズは頬をほんのり染めてセストを見つめている。

「あの……変、ですか?やっぱり、地味でしょうか」

固まったままのセストを見て、ローズは自分のドレスを見下ろした。

「いえ……とても、お似合いです」

正直、それだけ言うのが精一杯だった。

女性は化粧や衣装でかなり印象が変わるものだけれど、普段活発なローズがこんなにも柔らかい雰囲気になるとは思っていなかった。
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