光の花は風に吹かれて
「お前が見つかれば、その娘も満足するだろう。あまりうろつかれても困る」

まるで、彼女が探しているのがセストだと決め付けたような言い方。セストはなんとなく嫌な予感がしてじっとレオを見つめた。だが、レオは特に気にする様子もなく書類を片付けていく。

「それより、リアはまだ働いているのか?やめさせろと言ったはずだが」

レオは身重のリアがクラドールの仕事を続けていることが不満なようで、セストに何度もやめさせるようにと言ってくる。

「リア様がクラドールのお仕事をおやめになることはないと思いますが?」

リアはクラドールの仕事がとても好きだ。それに、動いていた方がルカも喜ぶと言って体調が優れないとき以外は積極的にセストたちの手伝いをしている。

レオも、彼女の希望はなるべく叶えたいという思いから強く言えずにセストを頼るのだが……レオが言っても聞かないものを、セストが言ってもリアが納得しないことは明らかだ。

レオがリアやルカを案じているのはセストも理解しているけれど、リアもクラドール。自分の身体の管理はきちんとできている。

「まぁいい……とりあえず、噂の娘をどうにかしてこい」
「……承知しました」

まとめた書類を手渡され、セストはため息をついた。自分が調査するのは決定事項のようだ。

「あぁ、城に連れてきても構わない。いや……その方がいいかもしれないな。とにかく、ちゃんと“収穫”して来いよ」

レオはそう言い残して執務室を出て行ってしまった。最後に口角をわずかに上げたのが引っかかる。それに……

「収穫――?」

セストの呟きは誰に届くこともなく、淡く消えていった。
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