光の花は風に吹かれて
「芽が出たんじゃないか?」

そう、口元を緩めながらセストに近づいてきたのはレオ。リアも肩を抱かれて一緒に歩いてくるが、少し足取りが重そうだ。

身重でのパーティはやはり負担が大きいのだろう。元々、少し挨拶回りに付き合うだけの予定にしてあった。

普段は話し出すと長い貴族たちも、さすがに今日は気を遣って早めに切り上げていたようだった。

「私をからかうのは後にしていただけますか?リア様をお部屋にお送りして参ります」
「俺は事実を言っただけだ。さっきからずっとローズのことを目で追っているだろ?」

それは、間違ってはいない。

ふわりと柔らかいオレンジ色は、常にセストの視界に入っていた。けれど、それはただ問題を起こされたら困るから、と。それだけで。

「まぁいい。リアを頼む」
「レオ、私は1人で――」
「いいから。大人しくセストについて行け」

セストの仕事を増やさないよう気遣うリアの唇に人差し指を当てて、レオがリアの言葉を止める。有無を言わせない口調にリアも黙りこんだ。

それに満足したらしいレオはフッと笑ってリアの額に軽く口付ける。

「おやすみ」
「っ、うん……おやすみ」

頬を染めてセストの視線を避けるように俯いたリア。

セストにしてみれば、額にキスくらいで驚いたりもしないのだけれど。セストは心の中で苦笑しつつ、リアを促して会場を出た。
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