光の花は風に吹かれて
リアを送り届けたセストが会場へ戻ろうと階段を下りていくと、招待客のために控え室として用意してある城のエントランスに近い部屋の扉が突然乱暴に開かれた。

「ローズ!」

出てきたのはローズで、部屋の中から聴こえたのは……エミリー女王の声。

セストに背を向けて会場へと戻っていくローズの表情はわからなかったけれど、その背中を見て、どうしてかローズの泣き顔が思い出された。

セストはそのまま控え室へと歩を進め、ちょうど出てきたエミリー女王の姿を見て立ち止まった。

エミリー女王はセストを見るとあからさまに顔を顰める。その後ろにはクロヴィスが控えていて、セストに気づいて軽く頭を下げてきた。

「お騒がせして申し訳ございません。少々、ローズ様とエミリー様のご意見が食い違っておりました故……」

クロヴィスは顔を上げて眼鏡をクッと指で押し上げた。

「私共はそろそろお暇致します。本日はお招きいただき、ありがとうございました」
「いえ……こちらこそ、わざわざご足労頂き感謝致します」

セストはそう答えて頭を下げた。

「…………今度は、一体何に利用するつもりですの?」

黙ったままだったエミリー女王はセストを鋭く睨みつけながら低く声を出した。
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