光の花は風に吹かれて
――利用する。

その言葉に、セストはまたローズの涙を思い出した。

あのときはレオとリアのことしか考えていなくて何も感じなかった。けれど、今は?

ローズが城へやってきて、何も知らずにセストに想いを寄せて。

セストの心のざわめきは、純粋なローズを利用したことへの後悔か、それとも正義だと思っていた自分が悪になったような焦燥感か……

「ユベールお兄様の行動について弁解するつもりはありませんわ。貴方の対応についても、間違っていたとは思いません」

そこで言葉を区切ったエミリー女王は、その眼差しを一層強くして続けていく。

「けれど、貴方がローズを利用したことは事実です。呪文解除は今の貴方にとって赤子の手を捻るようなものでしょう。それをしない理由は何です?まだ、ローズを利用するつもりなのでしょう!?」

最後はほとんど叫ぶように言い、エミリー女王はクロヴィスを振り返った。

「クロヴィス」
「はい」

呼ばれたクロヴィスは歩き出したエミリー女王のあとについて行く。エミリー女王は城の出口の前で立ち止まり、セストを振り返って小さく……しかし、ハッキリと言った。

「今日はこれで失礼致します。けれど……これ以上、ローズを利用したらルミエール王国は黙っておりませんわ」

セストはその後の「もう十分よ」という微かな呟きも聞き逃さなかった。
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