光の花は風に吹かれて
相手が他国の君主だからとは言え、何も言い返すことのできなかった自分に戸惑いながらセストは会場へと戻った。

あんな、ルミエール王国へ不法入国したこと――更にはルミエール城にまで侵入したこと――を認めるような振る舞いをしてしまった自分が情けない。側近失格だ。

ただ、エミリー女王にセストを咎める意思がないということはわかった。セストの侵入に気づいていたことも、ユベール王子の当時の行動を間違ったものと認識しており、セストを止めなかったということも。

それに、エミリー女王はローズが“利用された”ということについて拘っているようだった。

セストにだけではない。きっと、他にも何かローズが利用される出来事があったのだと思う。それは「これ以上は許さない」「もう十分」という言葉からも容易に想像できた。

――離縁の原因。

1番に思い浮かぶのはそれだ。王家の婚姻は、政略結婚であることが多い。最近は少なくなってきているが、愛する者と結ばれたレオは珍しいと言える。

王家と貴族を繋ぐための結婚と考えると、ローズが利用されたという表現もおかしくはない……か。

それは、もう無意識だったのかもしれない。会場を見渡しながらオレンジ色のドレスを探している自分に気づき、セストは額に手を当てた。

“芽が出た――”

いや、違う。

先ほどエミリー女王に何かを言われたのだろうから、少し心配なだけで。

でも。

それなら、なぜローズの姿が見えないだけでこんなにも焦っているのだろう――…?
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