光の花は風に吹かれて
――数日後。

セストは南地区に来ていた。ヴィエント城のある中央区に近いその町は様々な店が立ち並ぶ宿場町でもある。一番賑やかな通りをゆっくりと歩きながら問題の娘がいないか見て回る。

流れてくる噂や娘の今までの移動距離から考えて、この町にたどり着くのは今日・明日あたりだと目星をつけてのことだ。

(黒髪のショート、琥珀色の瞳に汚れたドレス……)

レオに言われるままに噂について調べたところ、彼女の目撃情報も手に入れることができた。彼女が初めてヴィエントの民に接触してからおそらく10日ほどが経っている。

ドレスが汚れているということは、着替えていないということなのだろうか……?宿に入る金もない、ということだろう。ならば食事は?

いろいろと考えを巡らせてはいるが、やはり嫌な予感に支配されたまま。

(ドレス……南地区…………)

セストは通りを抜けたところで立ち止まり、目元を押さえた。

あぁ、考えただけで恐ろしい。セストの“嫌な予感”とやらはよく当たるのだ。

おそらく……セストは彼女に会ったことがある。セストの記憶では髪は長かったのだけれど、琥珀色の瞳で南地区から入国した、ドレス姿の娘――特定するには十分な情報だと思える。セストらしき人物を探しているのなら尚更。

とりあえず、聞き込みをしやすいこの通りにいないということは、まだこの町には辿り着いていないのだろう。

この状況をどう回避したらいいのか。

セストは珍しく真剣に悩みながら、通りから外れて近くの泉へと進んだ。
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