光の花は風に吹かれて
セストだって、ルカがリアのお腹に宿るまではそう思っていた。いや、実際クラドールとして接してきた赤ん坊は皆そうだった。

ルカが少し特別だということはあるのだろうけれど、それにしても、これだけの風を操って大人たちを困らせる赤ん坊はこの世界にそういないと思う。

お腹にいたときから両親や周囲の人間とコミュニケーション――というよりは、自己主張しているだけな気もするが――をとり、生まれてからはまた自由度が増したようだ。

おそらく、リアのお腹の中では力を使うのにも限界があったのだろう。母体の影響も受けるだろうし、ルカも本能で暴れすぎてはリアに良くないということがわかっていたのかもしれない。

「リア様は体調が優れないの?」
『まー?』

母親の名前に反応してルカが嬉しそうに風を吹かせる。これくらい穏やかな風ならばいつでも歓迎するのだけれど。

「寝不足だったみたいだから」

昨日からレオが外交会議で大臣たちとフラメ王国へ行ってしまったため、愚図るルカにリアは一晩中付き合わされたようだった。

「レオ様がいないせいか午前中もずっとルカ様の機嫌が悪くて大変で、午後は世話係の侍女と随分遊んでやっとお眠りになったから――」

と、ちょうどそんなことを話していると、扉が開いて本人が入ってきた。

『まー!』

ルカの風がリアの髪をふわりとなびかせる。
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